【レビュー】Wacom FlexarmとエルゴトロンHXアームの比較
2018年11月にWacomより発売された、液晶タブレット用モニターアーム「Wacom Flexarm」とエルゴトロンの[HXデスクモニターアーム]を購入し、1ヶ月使ったのでレビューを行います。
自分は奥行きの広い机を利用しており、通常の使い方では運用ができません。同じ悩みを持つ方が居そうなので記しておこうと思います。
はじめに
Wacom Cintiq Pro 24を購入し、スタンド等を利用せず使っていましたが大きく場所を取り、他の作業を行う際、移動させることができない事、傾斜をつけることができず座った姿勢を変えられないことが不満でワコム製の専用アームを購入するに至った。
Wacomからはアームだけでなくスタンドも発売されているが店頭で実物を見た際に大きく場所を取るということ、角度固定の機構が不十分であることを理由にアームを選択した。
自分の利用している机は奥行きが80cmあり、奥からアームを伸ばすと伸び切った状態による揺れが懸念される。手前側に取り付けると絵を書く際にアームが邪魔になるため机に穴を開けて固定する「グロメット固定」が最適だと考えた。
しかし、Wacom Flexarmについての詳細レビューや、Wacomに問い合わせたところパーツが同梱されておらずグロメット固定には対応していないということであった。しかし、写真レビューを見るとエルゴトロン製のHXデスクモニターアームと基礎部分の構造が同じであることに気づき、HXのパーツは流用できないかと考えた。
ネット上で検索してもグロメット固定について触れている記事がなかったため後に購入する方や、今現在利用している方にも有用なレビューとなると考えた。
価格
Wacom FlexArm(Wacom CintiqPro 24/32専用エルゴトロン製アーム)
ACK62803K
¥38,660-5026(ポイント13%)
https://www.biccamera.com/bc/item/6040907/
HX Desk Monitor Arm(シルバー)
45-475-216
¥31,800
エルゴトロンとWacomの違いについて
Wacomのサイトを見ると「Wacom Cintiq Pro 24,32専用エルゴトロン製アーム。
角度の調整に加え、回転にも対応。従来のアームよりも安定性を向上させ、
体重をかけた描画にも耐えられます。」*1と書かれている。
HXデスクモニターアームは42インチのモニターにも対応しており、剛性感や動きの良さは折り紙付きではあるが、Wacomが絵描き用にチューニングしたというところが気になる。
モニターアームの一段目のアームを見るとその違いがはっきりと見て取れた。
Wacomのアームの方が角度が浅くなっており、机と平行になり、より液晶タブレットと机との距離を近くすることが出来る。さらにより前に出せるよう、アームの長さもWacomのほうが長い。
二段目のアームの太さや長さは変わらないが、表面の材質が違いWacomの方は表面にラバーが貼ってあり、エルゴトロンHXデスクモニターはアルミニウムである。Wacomの方にラバーが張ってある理由は、液晶タブレットがアームに当たっても傷がつかないようにかと思われる。
さらにアーム先端部が若干下方向に向いており、液タブ固定部分と机との距離を近くするための仕組みが見て取れる。
ちなみにWacom FlexArmの液晶タブレット固定部分は、HXデスクモニターに取り付けることが可能である。
グロメット固定方法について
両者の机とのマウント部を比較するとロゴが違うものの全く同じように見て取れる。
こちらがエルゴトロンのグロメットパーツでネジを机の穴に差し込みナットを締めて固定を行う。
ネジを外すと真ん中にグロメットのネジを収めるための穴が空いており、そこにネジの頭を差し込み、台座で固定する。Wacomのマウント部にエルゴトロンのグロメットパーツが差し込めたことで、両者の構造上の違いが全くないことが分かった。
机に穴を空け、固定することで、好きな位置からアームを出し調整することが可能となる。例えば今回のように机の真ん中に固定し、アームを椅子側に引き出すと言ったことも可能となる。
アーム角度の比較
HXデスクモニターアームとWacom FlexArmを最大まで机に近づけるとWacomのアームがより天板に近く出来るということが分かる。液晶タブレット本体だけ机においたような低さは実現はできないが、机よりも椅子側にせり出すことによって体を寝かせた体勢で描くことが出来る。
Wacomアーム以外で実現しようと思うと、エルゴトロンLXデスクモニターアームとなるがポール部分を一番下にしたとしても天板すれすれまでは近づけられないだろうと思う。
FlexArmの使用感について
絵を描く上で重要なのはペンで描写した際にグラグラしないかというところかと思う。アームはスタンドよりも接地していないため、スタンドや直置きよりも揺れやすいという問題点は残るため、全く揺れないかと言うとそうではない。
出来る限り揺れないようにするためには、液晶タブレットの背面を机の角や面に接地させるということが重要である。机に接地させることで線画では揺れが気にならないが、細かいストロークをしようとすると机全体が細かく揺れてしまう。剛性感のある机を使っているが、揺れを抑えるには足りないということだろう。
公式サイトを見ると立って描いたりなどいろいろな姿勢で描けることが強調されているが、上記のような揺れにより机と本体を接地させるまたは手で本体を支えると言ったことをしなければ線を引くだけでも垂直水平方向の揺れが出てしまい書きにくいだろうと思う。
アームの利点として使わないときは移動させて、手前側のスペースを確保できるというところだろう。普段は立てて24インチの4Kディスプレイとして利用し、絵を書くときは寝かせると言った運用も可能となる。
まとめ
Wacom FlexArmの価格としてはタブレットアームの中でも高額の部類になるが、アームの動かしやすさや大型液晶タブレットを十分支えるための剛性感、見た目のすっきり感を考えると値段だけの価値はあるだろうと思う。さらにHXデスクモニターアームよりもあらゆる点で描くという行為に特化した商品であり、構造上仕方ない揺れという点に目を瞑ればCintiqProのスタンドとして最適解だと言える。
グロメット固定についてエルゴトロン側の説明書を読み、Wacom FlexArmの画像を見ることでHXデスクモニターアームの固定方式がWacomでも使えるのではないかという仮説を立てたが無事にグロメット固定をすることが出来た。しかし、WacomとHXを同時に買おうとすると、アームだけで7万円はかかるため、モニターアームのコストパフォーマンス的には最悪であろうと言える。
大型の液晶タブレットを使う人であれば広い作業環境を用意している人もいるだろう、特に奥行きは重要視されており60cmはないと液晶タブレットを置くことが出来ないとさえ言われている。60cmぐらいであればアームを伸ばすことで椅子側の前に出すことも出来るが、モニターアームは伸ばせば伸ばすほど先端が揺れ易くなるためグロメット方式にもWacomが対応できると設置の幅が広がるだろうと思う。
Wacom FlexArmは高い買い物であったが少ない力でスペースを空けられる点、角度や高さを調整することで椅子にしっかりと背と腰をつけられ腰痛予防になるということで満足した買い物であったと言える。