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【レビュー】Wacom Cintiq Pro24とPro16を比較する!

 2018年3月にWacomより発売された24インチ型液晶ペンタブレット「Cintiq Pro24」を購入し、1ヶ月ほど使用したので初期レビューを行いたいと思います。

 「Cintiq Pro24」はペンモデルとタッチモデルの二種類ラインナップされており、私はペンモデルを選択しました。なぜペンモデルを選んだのかなどを解説しつつ、これから購入する人への参考となれば幸いです。

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Cintiq Pro24の写真。

 

はじめに

  Cintiq Pro16の4K解像度による画面の緻密さや、ペン先の追従性能の高さなど液晶タブレットとしての性能は申し分ない。しかし、CLIP STUDIOのパレットを3列+キャンバスエリアとするうちにキャンバスの横幅が狭くなり、拡大や縮小の回数が増えたことをきっかけに買い替えを考えるに至った。

 

 他には、メインPCのPCファンの音を静音化したときに聞こえるCintiq Pro16の冷却ファン音がとても気になったほか、画面の色味が調整しても赤く見える点やPro16の画面下にペンを近づけるとモヤモヤとした波状の表示が出る、黒い色で塗る際に多数の輝点が見られること等、他のサイトでも確認出来るPro16固有の症状に悩まされたということもある。

 

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CintiqPro16の輝点の写真

 画面の発熱も顕著であり、手を置く部分に熱源があり夏などはエアコンを掛けた部屋でもUSB式の扇風機を手元に当てなければ我慢できないほどに暑い。

 

 今述べた問題点の多くは、修理しても構造上の欠陥により再発するものが殆どで、一度交換修理に出した経歴もあるので新しく別の機種を買ったほうが良いという結論に至った。


商品解説

 いままでWacomから出ていた24インチFHD液晶タブレットを一新し、24インチ4K解像度を持つ液晶タブレットであり、ペン筆圧レベルも8192レベルと最新の技術を搭載し、画面色域もAdobeRGBカバー率99%とまさにプロ用のフラッグシップと言える。

 

 接続インターフェイスUSB2.0 Type-Aが1ポート、USB3.0 Type-Aが5ポート*1、他に電源アダプタージャック、SDカードスロット(UHS-Ⅰ)、3.5mmオーディオジャック。映像入力端子はUSB type-C、HDMI、DisplayPortとPro16より接続の選択肢は幅広く多様なPCにつなげることが出来るだろう。

 

 Type-c接続とのことでCintiq pro16にて動作確認済の100W Thunderbolt3接続を行ったところ、Type-cケーブル1本では起動させることができなかった。Cintiq pro24が100W以上の電力を必要としているのかは定かでないが、付属電源ケーブルによる電源供給が必須なのは間違いないだろう。*2

 

 24インチにはタッチ版とタッチなし版があるが自分はPro16でタッチは誤作動の原因になる(最新版ドライバで改善された?)、タッチや拡大縮小はプレビュー画面を拡大するときやブラウザ操作する時しか使わないのでいらないと判断した。

 

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映像端子類とUSB
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電源はレノボのノートパソコンなどで見られるタイプ

価格

 自分は5年間保証など手厚く、キャッシュレシュ還元セールが行われていたヨドバシカメラで購入した。

 価格は税込み249,980円であり、基本ポイント10%+キャッシュレスポイント5%+ヨドバシクレジットポイント1%付く実質価格¥209,983円で購入した。

 本体価格の5%で保証に入ることが出来るが、その分はポイントで相殺した。

DTK-2420/K0

[Wacom Cintiq(シンティック) Pro 24 ペンモデル 23.6型液晶ペンタブレット]

 

Cintiq Pro16との比較

パネルについて

 Cintiq Pro16ではハードウェアキャリブレーションを行っている(i1DisplayProを利用)にもかかわらずかなり強めの赤かぶりが出ており、Pro16で塗った絵は色調補正で+3ほど赤のカラーバランスを調整し、アップしていた。さらに、Pro16では仕様と異なる色域範囲をアナウンスされており、訂正後の数値でAdobeRGBカバー率85%だという。*3

 

 対してCintiq Pro24は出荷時設定で6500Kの白色点がほぼピッタリと重なるが、やはり少し赤かぶりを起こしており、そのままイラストを出力してしまうとキャラクターの肌の色味が薄れてしまうのでキャリブレーションで少し青みに振るか、イラストの調整が必要であると言える。まだ色については探ってる段階であるので、いい塩梅が見つかれば加筆する。

 

画面サイズについて

 小さい画面の液晶タブレットから大きな画面に乗り換えるときに最も考慮するべきなのはこの点だろう。大きなサイズの液晶タブレットは小さいものの上位互換ではない。しかし、私は買い替えてよかったと感じている。具体例を出すと…

  • 画面が広くなったことにより、情報量は変わらないが描画スペースを広く取ることができ、バランスを取りやすくなった。
  • ドットピッチが広くなったことによりレイヤー選択などがしやすくなった。
  • 拡大縮小の回数を減らすことができ、より効率的に塗ることが出来るようになった。

 Cintiq Pro24の良い点を上げたが16に比べて悪い点もある、例えば…

  • CLIP STUDIOを全画面表示にすると画面の端にあるツールパレットまでの移動距離が長くなる。
  • 4K100%表示でもぼやけたような印象を受ける。
  • 手首だけで書くようなやり方だと画面の一部しか活用できなく勿体ない。
  • 画面サイズが大きく、光などを反射しやすいため部屋のライト配置に気を配る必要がある。

 Cintiq Pro16の時にトーンを貼ったときはとても綺麗に、ドット一つ一つ表示できたが、Pro24のときにどうなるかはまだ試していないので未知数である。カラーイラストであればドットピッチによる差異は感じられない。

 

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ライトレールを利用し間接照明にしている。

取り回しについて

 自分の机は幅180cm奥行き80cmと世間一般的に見ても大きな方であるがCintiq Pro24を置いたところでほぼ埋まってしまい、資料などを広げる場所は少なくなってしまった。さらに、持ち運び用途としても使えるPro16に比べて巨大であり、軽く動かせるような代物でもないので机の掃除などがしづらくなってしまった。

 追加で160cmの机を購入し、L字型にするか悩んでいるところである。

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奥に27インチ液晶があるが大きさとしては同じに見える

Cintiq Pro16の問題点の解決

 まず画面品質についてだが、液晶ペンタブレットとしての剛性感を高めたのかPro16にあったようなペンで押したときにあるたわむような現象はPro24で起こっていない。おそらくたわんだガラスに押されて出来るであろう輝点も未だ発生していない。そして、Pro16全機種に言えるとされる波状の表示も見られない。

 

 冷却ファンの音については、購入前に使用者にインタビューしたところ、気にならないという回答を得ていたが全くの無音ではなく、エアコンの中風量くらいの音は絶えず出ており、無音の環境であれば多少気になるだろう(室温25度の部屋で測定)。しかし、Pro16よりもPro24のほうが冷却ファンのサイズが大きいためか音は若干低音で、Pro16よりも不快指数は低い*4

 

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CintiqPro16の二基の冷却ファン

 画面の発熱問題はPro24でも健在だとはいえ、手を置いて描画する部分に熱源はなく、両側にあるため気にならない。今の所の温度は約38度~39度であり夏にかけて見ていきたいと思う。

 

 自分はPro16において、接続はUsb Type-C一本で行っていたためPro24の電源ケーブル含めて2本というのは取り回しが面倒であるというのが本音である。さらに、USB Type-cで環境を統一し始めているため、Type-CのUSBメモリなどを挿せるようにPro24の表面にはType-Cポートを付けておいてほしかった。

 

Cintiq Pro 24の課題点

 まずとても気になった点として、価格に見合わないクオリティの低さが裏蓋にとても目立つということである。業務用という点を考えても作り込みが甘く、所有欲はあまり満たせそうにない。

 

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プラスチック成形のムラが見える

 次にVESA穴非採用によるオプションパーツの手の出しにくさである。Cintiq Pro24には下位機種のCintiq 22や16に見られるVesa穴がついておらず、9,000円ほどのオプションパーツを組み込むか、30,000円の専用設計のアームまたは50,000円ほどのスタンドを購入しなければおそらく満足する位置に調整できないだろう。ユーザーに負担を強いるような価格設定や商品設定は如何なことかと考える。

 

 現状ではコミック本をおいて高さを稼いでいる。

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12cmほど上に持ち上げている。

まとめ

  絵を描き始めて初めての大型液晶ペンタブレットであり、使いこなせるかなど板ペンタブレットから液晶ペンタブレットに乗り換えた時のような不安感はあったものの、使い始めて二週間ほどで違和感について特に気にならなくなった。大型液晶ペンタブレットに変えてしまうと腕の使い方なども矯正しなくてはいけないのではないかと思っていたが、スペースの無駄にはなるものの今まで通りの書き方で今のところは制作を進められている。

 

 仕事で使うならともかく自分のように趣味的範囲で購入するには少し思い切りが必要な価格設定、大きさではあるがそれだけの仕事はしてくれるのではないかと期待している。

 

Cintiq Pro24の補足

液晶保護フィルムについて

 Cintiq Pro16では液晶保護フィルムは貼っていなかった、標準のペン先を使用しており、深く残るほどの傷がつかなかったからである。しかし、今回のPro24では標準で貼ってあるフィルムにギラギラした反射光が見られ、作業する上でとても気になった。

 

 私は以下のサイトから光を反射しないタイプのフィルムを購入し、貼り付けたところしっとりとしたような画面となった。

item.rakuten.co.jp

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CintiqPro24のソフトウェア上の変更

 均一性補正をオフにすること。ハードウェアキャリブレーションを実施してもソフト側で補正が入るためあまり意味がなくなってしまう。おそらくEizoのような回路に直接組み込まれているようなものとは異なる。

 

 次にファンの回転数を低速にすること。初期値のままであると冷却ファンが高速で回り続けとてもうるさい。

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*1:Type-cで画面接続をした場合全ポート2.0に変更

*2:GigabyteGC-TITAN-RIDGEを使用

*3:液晶ペンタブレット製品の色域に関する技術報告書 2019年4月

*4:Pro16は「キィーーン」、Pro24は「コォーー」という音